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2014.08.30

あつくて ねむれない

涼しかったり、蒸し暑かったりのこの頃。

真夜中、「かあさん あつくてねむれない」
というミギの声に起こされた。
うとうとしながらも起きてみると、確かに少し蒸し暑かった。
布団に入ったときは涼しかったが、
雨が降ってきたからか、部屋の湿度が上がっている様子。

「扇風機つけていいから、近くに行って寝なさい」
少しすると
「まだ あつい! あつくてあつくて ねむれない」とミギ。

見ると、扇風機はついているものの、
風があまり当たらないところに寝ている。

「どうしてそこで寝てるの。 もっとあっちに行って寝なさい」
「なんか ぬれてるとこがあったの」
「自分の汗かよだれが少しついてるだけじゃないの。
涼しいところで寝なさい」
布団をササッとなでてみたが、それらしいところは見当たらず、
“おねしょ”じゃないことを確認した私はそう答えた。

と、すぐにまた
「せんぷうきつけても あつくて ねむれない!」とミギ。
「そんなに暑くないよ。扇風機に当たれば大丈夫でしょ」
「ねむれない!」

深い眠りのところで起こされた私は、早く眠らせてほしくて、
まあ、ぞんざいな対応をしていた。

「じゃあ、お水でも飲む?」
「のむ。のんで、おトイレにいく」
「じゃあ行くよ。早くおいで」

水を飲ませてトイレに行くとき、“はっ”とした。
ミギの体が熱い。

「熱があるね。熱があったんだね。
ごめんね気がつかなくて、だから暑かったんだね。
ごめんね、ごめんね」

私が謝ると、ミギがうなずきながら泣き出した。
きっと、暑がっていることがまちがってなかったこと、
やっとわかってもらえて安心したのだと思う。

あー、ダメじゃん私。
ミギが起きてきたときに熱に気がつかなかった。
子どもが小さい頃は、もっと敏感だったと思うのに。
ましてやあの子はあんなに「あつい」って言ってたのに。

涙はすぐに止まり、
そこからは“ぼくは病気で特別”という意識になったため、
真夜中にもかかわらず“テレビをみたい”と言い、
録画してある『ひつじのショーン』を一話だけ見てから
アイスノン枕をして眠った。

翌朝、起きたときにはまだ熱があったが、
朝食を食べ終わる頃には、もう平熱に下がった。

「きのう かあさん、ぼくに すごく あやまったんだよね~」
朝食を食べているとき、楽しそうにミギが言った。

「ミギが“あつい”って起きてきたんだけど、
 母さん、はじめは熱があることに気がつかなくて、
 だからごめんねってあやまったんだよね」
私は、ミギに応えつつヒダリに説明するように話した。

たいしたことがなくてよかった。

ミギにとっても私にとっても、
印象に残る夏の終わりの夜の出来事。

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2014.08.21

~はじめてみる、ちひろの世界。~「いわさきちひろ×佐藤卓=展」2

別の日に美術館を訪れ、
ギャラリートークに参加したり、美術館の方とお話しする
機会をいただいたので、追加レポートを。

今回の展示で、私が一番来てよかった!と思った
ちひろさんの線画について、こんなお話をうかがった。

線画の展示に関しては初公開のものも多く、
未完の作品など、発表する予定のなかった作品も
含まれている。
そのため、美術館としては、
これが“展示として成立するのか”という疑問や、
“ちひろさんがご存命だったら、これらの作品をみなさんに
見せることを、きっと嫌がられるだろう”という思いも
あったそうだ。
でも、佐藤さんの
“ちひろさんの線をみんなに見てもらいたい”という思いと、
“ちひろさんの線なら大丈夫”という力強い声に背中を押され、
今回の展示に踏み切ったとのこと。

今年2014年は、ちひろさんの没後40年にあたる年。
今回の展示は、
佐藤卓さんとちひろさんの実験室であると同時に、
美術館としても大きな実験だったそうなのだ。
私が、あの線画の展示が一番素晴らしかったということを
伝えると、スタッフの方がとても喜んでいらっしゃったのが
印象的だった。

 *

この日は休日の午後ということもあって
小さな子ども連れの方も多く、撮影が許可されている
“ちひろ × 佐藤 卓 の実験室”の展示は、
佐藤さんが、ちひろさんと子どもたちをつなげるために
作ったことが、より感じられる空間になっていた。

他の展示室は窓もなく照度を落とした部屋になっているが、
ここは天井が高く、自然光の入る開放感のある展示室。
「デザイン あ の人が作ったんだよー」と
お母さんが子どもに説明したり、
“あ”の文字とちひろさんの絵のコラボレーション作品の前で
写真を撮る家族連れや、
小さな手でカメラを支え、
「ママ! しゃしん とりたい!」と自分が気に入った作品を、
背伸びをしながら撮影する姿があったり。

この部屋でちひろさんの線のタペストリーを見ながら、
ちひろさんの線とコラボレーションできるワークショップ
ができたら、もっと楽しいだろうなと想像した。
(ちひろさんのスケッチの線の一部を印刷した紙を使って
 自由に絵を描くことができる。現在は、図書室で実施中)
Tapesutori2


図書室と言えば。
見落としそうな場所だけれど、
図書室の壁にもちひろさんの絵が展示されていた。
ここの作品は他のものとは違い、
自然光の入る明るい部屋で絵を見ることができる。

本来、水彩画は紫外線で退色しやすいため、
ちひろさんの作品は照度を落とした部屋で展示されている。
しかしちひろさんは、大きな窓から明るい自然光が入る
アトリエで絵を描いていたことから、
同じように明るい部屋で、絵の色彩を感じてほしいと、
耐候性のあるピエゾグラフというデジタル技術を用いた
複製画が展示されている。
“絵本は読まなくていいかな”という方も、
興味のある方はぜひ。


最後に椅子を二つご紹介。

ちひろさんの線画が展示されている部屋には
素敵なソファが置かれている。
驚いたのは、このソファはちひろさんが愛用していたもので、
展示のひとつであると同時に、
そこに座って作品を見たり、ちひろさんの絵本を見ることが
できるようになっていること。
“ちひろさんの家に遊びに来たような雰囲気を大切にしたい”
との思いが、このソファには込められているそう。
Sofa


こちらは2階の廊下に置かれたベンチ。
この落花生のような形は、子どもと大人が一緒に座るのに
ちょうどいい形だなと思っていたら、
建築家の中村好文さんの“ララバイ”という作品で、
親子、恋人同士、夫婦など、
二人がやさしく寄り添えるようにデザインされたベンチとのこと。
フォルムの美しさや柔らかさ、また、それがさりげなく
置かれている様子が、ちひろ美術館にピッタリだなと思った。
Oyakoisu

うちの5歳の息子たちは、
男の子の双子ということもあってか、
こういうところに来るとワーッと走りたがるし、
あきれるほど二人でふざけてばかりなので、
まだ、ちひろ美術館に子連れでゆっくり来たことは
ないのだけれど、
いつか息子たちひとりずつと二人きりで来て、
ここに座ってゆっくりおしゃべりできたらいいなと
想像(妄想?)した。

まあでも、息子たちと私の3人で来て、
展示は子どもたちの興味にまかせて見て、
最後に図書室の絵本をたくさん読ませられる、っていうのも
いいのだけれど。

ということで、ちひろ美術館レポートはひとまず終了。

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~はじめてみる、ちひろの世界。~「いわさきちひろ×佐藤卓=展」

Top_tirasi_2


久しぶりに「ちひろ美術館・東京」へ。

“はじめて”というテーマと、佐藤卓さんプロデュース、
しかも“特に子どもたちに届くように”という内容に惹かれて、
観たい!と思った企画展。
(佐藤さんは、「ロッテキシリトールガム」「S&B スパイス&
ハーブシリーズ」などの商品パッケージや、
Eテレ『デザインあ』の総合指導などをしている
グラフィックデザイナー)

新鮮でとても見応えがあった。
特に、ちひろさんの線画を集めた展示室がすばらしくて
これを見られただけで来てよかった!と思った。
(線画は、ちひろさんのイメージからは意外な感じだけれど、
それがよかった!)

ちなみに私はちひろさんの絵が大好きというほどではない。
後ろ姿の子どもの絵など好きなものもあるのだけれど、
どこか寂しげに感じる子どもの表情が、
なんとなくしっくりこない部分があり、
また、勝手なイメージだけれど、
ちひろさんの絵は、大人が遠い日の自分の子ども時代や、
我が子の幼い頃の様子を懐かしんで見るような印象があって、
私はまだいいかなあと思っていた。
ちひろ美術館に来るのも企画展目的のことが多く、
ちひろさんの絵だけをじっくり観たことはなかったと思う。

でも今回の企画展でそのイメージが変わったし、
イメージが変化していく体験が楽しかった!

ということで、さきほど書いた“線画の展示”。
これは「佐藤卓が選んだ、ちひろの絵」というコーナーの
ひとつで、墨、インク、鉛筆などの線だけで描かれた
小さなスケッチが多い。
でも、例えばヒメジョンの花のふわっとした様子や、
ススキの穂のやわらかな感じ、
ブランコと子どもたちの様子など、
絵を見ていると、光や風、子どもたちの声が
伝わってくるような気持ちになったり、
“杭にかけられた包み”というなにげない絵や、
“鉄条網”の線画には、ハッとさせられるものを感じた。
緻密な絵というのとは少し違う。
対象をしっかり見て、
どのような線で描くとそのものが現れてくるかを
研究している様子。線の豊かさ。
ちひろさんは書家を目指していたこともあるとのこと。
絵画とは違う“線”に対する意識やアプローチがあったの
かもしれないと想像したりもした。

これらの線画は、
普段展示されることがない作品も多いとのこと。
“デザインは美しさやかっこよさではなく、その本質を見極め、
その魅力を人に伝えること”と考えている佐藤さんが、
ちひろさんの線を“おもしろい”と感じて、
そこに光を当てたところがまた、興味深かった。

さらに佐藤さんは、この線画をパターン化して、
「ちひろ×佐藤卓の実験室」のコーナーで
タペストリーとして展示しているのだが、これも素敵だった!
モダンなテキスタイルデザインのようで
それだけ「線」に深みや味わいがあるのかなと思ったり、
“パターン化する”という佐藤さんの視点とアイデアに
「ほー」と思ったり。

また、このちひろさんの線をモチーフに、
来館者(大人も子どもも)に絵を描いてもらう“実験”も面白くて、
(『デザインあ』の中で、“あ”をモチーフに絵を描くのと同じ)
展示してある作品たちを見ながら、
こういう発想は子どもにはかなわないなあと楽しませてもらった。

企画展はこの他にも
佐藤さんのデザインの仕事の一部を紹介した展示
「佐藤卓のデザインの採集」
(デザインに至る考え方も展示されていて、
それが面白い)
Spice
(エスビー食品 スパイス&ハーブ シリーズ 2006年)


線画とは別に、子どもの絵を中心に佐藤さんが選んだ展示
「佐藤卓が選んだ、ちひろの絵」
Photo
(いわさきちひろ ランドセルをしょって並んで歩く一年生 
1966年)


佐藤さんがちひろさんの絵からインスパイアされたものを、
複製画と一緒に標本箱におさめた作品の展示
「ちひろ×佐藤卓の実験室」
Photo_3
(佐藤卓 “机に向かう少年×ロッテ キシリトールガム”)

タペストリーはこの「実験室」に展示されている。
充実した展示内容で、いい時間だったなあ。
Tapestory


この美術館は、いわさきちひろさんの自宅兼アトリエ跡に
造られていて(アトリエは今でも見ることができる)、
お庭の緑や大きな窓からの自然光も心地よく、
美術館までの道のりは
「こんなところに美術館が?」と思うのだけれど、
入ってみるととても心地よいのだ。
あらためて、もっと頻繁にここを訪れようと思った。
Nakaniwa_2

Nakaniwa2_2

それともうひとつ。
ちひろさんの言葉の中に、
育児や家事、仕事にがんばっている友だちに
教えてあげたいなと思うものがあった。
Kotoba

「独身だったら気楽で、絵もバンバン描けるだろうと
考えられるけど、とんでもないですよ。
夫がいて子どもがいて、私と主人の両方の母がいて、
ごちゃごちゃのなかで私が胃の具合が悪くなって仕事を
していても、人間の感覚のバランスがとれているんです。
そのなかで絵が生まれる。
大事な人間関係を切っていくなかでは、
特に子どもの絵は描けないんじゃないかと思います。
「教育評論」(日本教職員組合)1972年11月号より」
ちひろ美術館のHPにも掲載されています)

最後に、今回の展示は、ちひろ美術館が主催する
ブロガー特別内覧週間というのに応募して運良く当選、
招待していただきました。
おかげで行きたかった企画展に行きそびれることなく、
滞ってばかりのブログも更新することができて、
とてもいい機会をいただきました。
また、写真撮影や画像をお借りすることについても
配慮していただき、本当にありがとうございました。

別の日にギャラリートークにも参加させていただいたので、
少し追加レポートを書かせていただきました。
ご興味のあるかたはどうぞ。
(ここに書くと長くなり過ぎるので…)

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